タックスヘイブン税制とは
タックスヘイブン税制とは、税率が低い地域を利用して租税回避を図ることを排除する制度です。一定の軽課税国で得た所得で、その海外子会社が特定海外子会社にみなされる場合には、内国法人(すなわち日本親会社)と合算をして課税が行われます。
正確には下記のように規定されています。
タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)とは、わが国の内国法人等が事業上の合理性がないにもかかわらず、租税負担の軽い国や地域に所在する子会社等を通じて事業を行うことにより租税回避を図る行為を規制するための制度です。一定の軽課税国に所在する外国子会社等が「特定外国子会社等」に該当する場合は、原則としてその所得は、当該子会社会社等の一定の持分を有する内国法人(および居住者)の所得に合算して課税が行われます。
タックスヘイブン対策税制は、2009年度税制改正による国外配当益金不算入制度の導入を受けて、2010年度の税制改正により抜本的な制度の見直しが行われたものです。近年のアジア諸国等における法人税率の引き下げや、日系企業の急激な海外展開とも相まって、タックスヘイブン対策税制の適用に係る税務調査が厳格化する傾向にあります。
出典:PwC
ようするに、事業上の合理性がないにも関わらず法人税が20%前後のシンガポールや香港などに子会社を設立して、所得をその子会社等に集めて節税を図るのはだめですよ、という制度です。
海外子会社は連結納税出来ない
前提としてですが、海外子会社は連結納税は出来ません。
「連結納税」という言葉から、グループ全体の利益に基づく税金は、日本で収められているようなイメージを持つ人もいますが、日本国内の法人グループで、かつ一定の条件を満たした場合にのみ、連結納税を行うことが出来るため、海外子会社はその国において、その国の法人税に基づいて税金を支払っています。
そのため、親子会社間で、何らかの支払い(コンサルティング業務に対するサービス料など)を行うことを通じて、法人税が軽い国へ利益を移転することで、グループ全体としての税金として支払う金額を抑えることが出来ます。
例えば、日本の親会社がシンガポールの子会社へ100億円をサービスの対価として支払うとします。本来その100億円に対して、日本で30%の法人税が適用され、30億円が税金となるはずだったはずです。しかし、シンガポールで100億円の所得となることで、20%の法人税が適用され、20億円の税金で済み、10億円のメリットを生むことが出来ます。
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タックスヘイブン税制を避けることはできない?
現在、法人税率が20%以下の国に対しては、タックスヘイブン税制が適用要否が検討されます。
年々、タックスヘイブン税制は厳しくなってきており、平成30年度の改正では、法人税率が30%以下の国に対しては適用要否が検討されることになります。
平成29年度の日本の法人税率が約30%であることを踏まえると、少しでも節税しようとした場合にはタックスヘイブン税制を適用して、一切そのような行為は認めませんよ、ということのようですね。
海外子会社が一切不可能なわけではなく、あくまでも「事業上の合理性がない」場合なので、本当に事業を行っているのであれば、シンガポールや香港などで法人を作って利益を上げても、低い法人税率を適用することが出来ます。
「事業上の合理性がない」場合とは、単なる登記だけをしたペーパーカンパニーや、あるいは配当収入や不動産収入、ライセンス収入など受動的な所得とみなされる所得が一定水準を超える場合(そのような会社はキャッシュボックスと呼ばれます)です。
そのため、今後、グループ全体として税務メリットを取るためのスキームを検討する場合には、あくまで軽課税国に実質的な事業収入があることを前提としてスキームを構築する必要があり、ますます難しくなってきそうですね。